おりぎぬ



トラウマ持ちだというのもひとつだが、戦い方が苦手というのが一番の理由だ。
エドガーは俺と全く同じタイプだからどうもこうもなく、ベリルは素早いけれども結局は肉弾戦。それの射程距離が長くなったのがシェイド。オルティガもジャッカスも、武器は使えど物理的。…見える。ナタージャ…悪い、いたな。あれとはやったことはないが、まあだって、実際戦うのはモンスターな訳だろ?何の問題もない。
白い悪魔。―――セツナ。
幼い頃から目の前に立っているのが当たり前で、皇子のエドガー共々ありとあらゆる事を仕込まれた。読み書きから国の歴史に作法、戦い方。誰も信じないだろうから言わないが、表書庫にある蔵書の半分には目を通してある。……させられた、だけだが、読んだ事には変わりはない。これも言わないが(セツナは知っているが)、生まれの関係で、聖龍の文字も読めるし書ける。それを重宝がるほどセツナは稚幼ではないが、王族―――皇子に近いものとして、いい扱いは受けている。言ってみれば育ての親にも近しく、親しみを抱いている事は疑いもない。
攻撃、は、エドガーとの喧嘩で覚えた。
だが戦い方、は、セツナによって叩き込まれた。
打撃一直線の俺とエドガーは、全くそうは見えないセツナの、どこから出したのか判らないような早い、重い拳を何度も叩き付けられて幼少期を過ごした。何でも出来る男だから、俺達のありていに合わせていたのだと思う。
それが何とはなく見えるようになって、ふとすれば避けられるようになっていった。
純粋な喜びが湧きあがって、まさかそこからの方が地獄になるとは俺もエドガーも思ってはいなかっただろう。
セツナ、は恐怖を形にしたものだった。


***


専用と冠させるのもおこがましいが、獣牙の城の内部には上層部専用の修練場がある。そんなのはどこの国に行ってもあるだろうと言われそうだが、獣牙のそれは本当に上層部しかその場所を知らなければ、存在も明るくされていない。無論ちらほらとした噂は聞くだろうが、実際にその場所を突き止めることは不可能に近い。そして知らない方が幸せなことがある。
獣牙の将軍職は、兵士の数に不釣合いなほどに少ない。言いかえれば精鋭と言うことだ。ぽんと飛んできたようなベリルだって、あれはあれでとんでもない女だ。歳は実は俺の倍は軽く生きてるし、何よりも俺の頬に引っ掻き傷を付けたというのが何よりものことだ。

獣牙族には戦闘形態という進化がある。
将軍職以上の連中はそれが可能である者が多い。稀少種の連中にもままあるらしい。神の血が濃く残っているからだという。神の領域を侵して生まれてきた俺にはその能力はないが、それを非望したことは特にはない。エドガーとサシで殴り合っても平気な程度には体は丈夫だし、聖龍とも渡り合えてきたから十分だと思う。何より今ではセツナに勝てる。
セツナは戦闘形態を持っている。だが実際にそれを見たのは一度きりで、戦争の真っ最中の事だった。戦闘形態のセツナと戦ったことは、だから、ないが、それでもセツナに今では勝てる。セツナに勝てるのは俺とエドガーだけだ。親父様がどうだったのかは知らないが、エドガーが勝てるのだからその父親が勝てない訳はないだろう。
そのエドガーも当然戦闘形態を持っているが、危ういかな、制御が緩い。
組み手程度であれば問題はないが、試合形式、サドンデスともなれば、気が付けば出掛かっている事がままある。
戦闘形態とは所謂本能のことだ。
闘争心というよりはもっと原始的な、生存本能を拠り所にしたものだという。
突き詰めれば、相手を殺そうとする欲求ということだろう。
死なない為に殺す。滅びない為に滅ぼす。
唯でさえの精鋭が、下手をすれば殺人欲求のみで動くような場が、つまり専用修練場。
下級兵が紛れ込んで良い場所ではないという訳だ。


修練場は城の裏手にある。城とは繋がっているが、ただぽつねんとあると言っても過言ではない。完全な吹きっ晒しだが、獣牙族でそれを気にするものなど誰もいない。泥足で城内を歩くことには流石に抵抗を示すが、実は禁止されてはいない。
「そういうのを節度と言う訳だ」
「つうかただ、セツナが怖かっただけだと思うけどな俺は」
「そっかもなー」
本日は晴天なり。風もそれほど強くなく、収穫祭間近のとても麗かな日和である。
皇魔族が去ってからというものは目立った抗争が起こるはずもなく、日々は和やかに過ぎて行く。原生モンスターも荒ぶるもなく、そうなると逆に辛いのが獣牙のサガである。将軍が領内を好きに出歩っても咎めだてがおこるわけでもないが、とかく体を動かす―――というよりは戦っていたいと願う人間ばかりだからだ。ふらふら散歩をすることもすこぶる好もしいのだが、誰かと顔を合わせてしまえばそのままここに来るようになる。
エドガーは新王として、本格的に城にカンヅメな日が続いている。
喧嘩相手は強いものが望ましいので俺も大概城内にいる。
ベリルはその俺の背中によく張り付いているからやっぱりそのまま修練場に来る。
エドガーがカンヅメということは、セツナも常駐するという意味だ。
セツナが城にいれば、片割れのシェイドもどこかには居るようになる。
オルティガやジャッカスは城に留まる質ではないので、蓋を開ければいつもの面子、という訳だ。
…ちなみにナタージャを修練場で見かけたことは一度もない。
「そんなに怖いかなあ。アタシ、一発合格だったじゃん」
「お前は別だ。ったくなー、襲ったのが俺で良かったと思えよ」
「まああとあん時人手欲しかったつうのもあったよな。シェイド抜けてたし」
「お前、王がそれでいいのか」
「いんじゃねえの。お前だってちゃんとやってるもんなぁ」
「ねー」
セツナは常に紙束を抱えて部屋に篭っている。あれはもう趣味だろう。シェイドは夜行性だから昼間は余り外に出ないし、セツナが忙しければその補助に回るのが最優先、だそうだ。引き算をすれば俺、エドガー、ベリルが常連となる。日が傾けばシェイドもやってくるが、セツナが来ることはそれでもない。
「ねー、じゃないぞおい猫科」
「まあいいだろ別に。役に立ちゃいいし。丈夫な女ってのはいいと思うぜ」
「ありがとっ!王様っ!」
「あーもー」
「お、何じゃれてんの」
「おうシェイド」
「へへー、混ぜてもらうぜ」
シェイドの声はいつまで経っても高い。子供のものではないが、すぐに大人だとは断ぜない。高すぎて飛ぶ事もあるが、それは『声ではなく音波です』とセツナが言っていた。そんな声が柱の向こうから現れた。
「丁度良かったーっ!アタシの相手して!」
「おうそうだな。これで余りナシってことで」
「あー、悪いけどそれムリ」
「なんでよもぉーっ!」
「セツナ来っから」
「ウソ」
ホント、とシェイドは笑ったが、俺とエドガーは肩を一瞬引き揚げた。
反射だ。


***


単純攻撃を避けられるようになるまでは良かったのだ。
向かい合って、セツナの拳を受ければ失敗、避けられれば成功。単純至極な訓練だったが、達成感も同じだけわかりやすかった。
目が鍛えられた。体も打たれ強くなったし、殴られても倒れないように踏ん張ったりしたから足腰も強くなった。毎日のように筋肉痛に襲われたが、耐えれば耐えただけ逞しくなる体が嬉しかった。
地獄の始まりは、成功、がもう日常になった時だった。
「今日から」
セツナはそう切り出した。
「戦い方を学んで頂きます」


***


紙束と一緒ではないセツナを見るのはどれくらいぶりだろう。指先を眺めるようにして掌を開閉させる動きは変わっていない。
恐怖の対象でしかなかった時期もあったその動きの真正面には、矢鱈と嬉しそうに背伸びをするシェイドがいる。
シェイドの顔を見るベリルは、とても胡散臭そうだ。シェイドに対してではなく、俺とエドガーに対しての疑念なのは聞かなくともわかるというものだ。俺とエドガーが、セツナに勝てる、ということをベリルは知っている。セツナがそれを言ったので、疑われる余地もない。それだというのにセツナを恐怖対象としてあげつらい、反射で肩が上がってしまう。一方でこれからセツナと勝負をするというシェイドは、曇りない笑顔まで浮べている。
この矛盾に満ち満ちた空間を、そりゃあ、当事者でなければ、俺だって胡散臭く見るだろう。

セツナが俺達に武術の稽古をつけなくなって以来、セツナを修練場で見かけることはまずなかった。それからは俺達は二人でやってきた。シェイドを引き抜いてからはそっちに合わせて夜間に居たとかいう話も聞いたが、それもごく短期だったようだった。
実を言えば、確かにセツナの存在は恐怖でしかたなったが、だがセツナが修練場に来なくなるのを残念に思っていたこともまた事実だ。恐怖に思えるくらいセツナは厳しかったし、強かった。だからぱったりと止めた足がまた動きはしないかと思う時もあった。エドガーは強いが、だがやはり自分と殆どタイプが一緒なのである。お互い曲げることも緩めることも、変えることも出来ない。新参で、しかも直属になるのだというシェイドに稽古を付けるのは、理屈ではあったし理解もできたが、羨ましくも思えた。エドガーもそうだったらしいことは知っている。
何より、セツナが王族以外に稽古をつけるなぞ、今までなかった事なのだ。
だから1度2度、たまにはどうだ、と誘うこともしてはみたが、体良く断られるのが常だったのだ。
それをシェイドは引っ張り出してきた。
容易くではないにせよ、例外の二つが二つとも同じ人物によって作られてしまったのだ。
「あんたとここに来るなんて久しぶりだよなー。10年ぶりくらい?」
「8年だ」
「そんなかぁ」
「大体ここでなくても良かろう。夜にやってやると言っているのに」
「昼間じゃなけりゃ、コランダムいねえじゃん」
「は!?何、俺!?」
「お前に勝てないのが悔しいのだそうだ」
「そんなの、あんたが飛天の癖が抜けてないだけじゃないの」
「それも言ったのだがな」
「つうかいやそうじゃねえ!何だそのくっだんねぇ理由!」
「下…ってなあ!何だ勝てるからって!いい気になんなよな!」
「そりゃこっちのセリフだ!稽古なら俺とエドガーがつけてやるわ!」
「俺はセツナがいいの」
にぃ、と牙を見せながら、無邪気に笑う。引き上がった頬に走っている色が、赤であることに初めて気がついた。
…灰じゃなかったか?
「じゃ、やろうぜセツナ」
「分かった分かった」
腕組みに変わっていた手を解き、見覚えのあるポーズをセツナが取る。
途端、背には沫がふつふつと走る。
ベリルは未だに半目だが、多分、5分くらいたったら分かってもらえるようになると思う。


「1時間程度したら起きるだろう」
「いや1時間じゃちょっと無理じゃねえの」
「普段はそれぐらいだ。起きないようなら叩き起こせ」
冷たく言い放つセツナの足元には、無残に血を吐いたシェイドが転がっている。仰向けの状態で上から降ってきたので、腹やら胸やらに見える赤い跡が痛々しい。
「ではわたしは戻る。エドガー様」
「おう」
「終わりましたら仰って下さい。閉めます」
「珍しいな」
「東から文書が来ました。暫くはここは閉鎖です」
「え、どゆこと?」
…ベリルは怖いものがないようだ。
「聖龍から使者が来るようです。サイガ様はいらっしゃらないようなのですが」
「何でぇ来ねえのかよ」
「絶影は!?」
「来ないだろうな」
「うーっ!」
「暫くここには入る余裕もなくなると思いますので」
「そっか。分かった。頼むわ」
「はい。では」
去って行くセツナの銀毛がやはり名残惜しいと感じてしまうのは獣牙のサガだ。だが、足元に転がったままのシェイドを見れば一瞬で、鳥肌が立つ。
「取り敢えず、こいつどかすか」
振り切るようにシェイドを持ち上げ、柱の影に放り込む。…丈夫ってのはいいことだ。そこにベリルがとことこと寄ってきた。シェイドを見下ろす。
「セツナ怖いね」
「お前、本気でそう思ってんのか」
ベリルの口調はいつも通り、カラリとしている。怖い、と言われても、どうにも信用の置けない響きだ。
「だってシェイドがあんなだもん。フツー、訓練っていってあそこまでやんないよ」
…どうやら、本気らしい。
「それに、全っ然、見えなかったもん」

単純攻撃とはつまり、拳が飛んでくることだ。
あの日を境に、セツナの攻撃からそれががくりと減った。
何だかわからない、何かが、ありとあらゆる方向から飛んでくるようになった。
始めは1対2だった。
それなのに気がつけば朝日が昇っていたり、骨が折れている時だってあった。
その何か、が何だか分からないにせよ、どうにかこうにか避けられて、セツナに攻撃が当てられるようになり、打ち負かす事はできないにせよ倒れることもなくなった。
セツナが、地面に顔を付けるようになった時、わたしからの稽古は今日で終わりです、と告げられた。
恐怖が去って行った。

「おんなじ事やってんだなあ」
エドガーがしみじみと呟く。
「今は見えるからいいけどよ、昔は怖かったよな」
「王様、アレ見えるの?何?」
「いや、何か、ってのは全っ然見えねえ」
「何それ」
「見えないけどな、なんだ、勘?」
「おいおい」
「あれで拳も混じってんだけどな、まあ色々種類があってだな。アレが避けられるようになれば、大概の属性には対応出来るようになるという事らしい」
「…そうなの?コランダム」
「…まあそんな感じ」
雑把だがそれでいいだろう説明。セツナが何をして攻撃としているのかは実は未だに判らない。拳と炎は認識出来るが、それ以外を視認することなど恐らく一生無理だろうと思う。そもそも獣牙族で炎を操るというのが異端だ。どう見たって飛んでいるのもおかしい。だがあのご長寿に、今更どんな難癖をつけた所で無意味なのも分かっている。
重要なのは、あの一連で、どんな攻撃手段にも即座に対応できる判断力がついたと言うことだ。
…多少のトラウマと引き換えに。
「アレを親父も、じいさんも、その前もずーっと受けてきたって訳だ。城に入る前に泥だって落とすだろ」
「うーん。王様にも苦労ってあるのね」
「俺ら染み付いてるよな」
「可哀相な目で見るな」
「あとさあ」
「ん?」
「閉めるってなあに?ここ吹きっ晒しじゃん」
「ああここはなあ、セツナが結界張ってんの」
「外からも中からも見えねえって話だぜ。俺らは始めっから見えたけど、将軍職以下は見えもしねえってよ。中のモノが漏れるってこともないとか聞いたぜ」
「…何で?」
「そりゃ」
「誤殺防止じゃねえ?」
足元のシェイドは未だピクリともしない。これ以上の証拠もないだろう。
セツナが軍内で何と呼ばれているかは知っている。
白い悪魔、だ。
下級兵が囁く呼称は連綿と受け継がれているらしく、いわれとなったものが何であるのか知らない者もその名を口にする。常態からして度を越した厳しさが理由の一つにあるのかもしれない。常軌を逸した長命と、どの国でも例を見ないような権力の権化ぶりへの揶揄と侮蔑も一端だろう。
尤もそれは、遠吠え、なのだ。
上に行けば行くほどその呼称は意味を変える。そもそもそんな囁きをする連中が上に上がれるはずもないのだが、上の人間ほどセツナを敬愛している。
全く同様に恐怖対象であるのがお笑いだが、それは仕方のない事だと思う。……しかない。
「何でもできるんだ」
ベリルが、ちょっと羨ましそうに聞こえるのは気のせいだろうか。
「お蔭で頭上がんねえけどな」
それだって冗談だ。実際セツナは常に腰が低く、王族を全面的に立てる。雑務をほぼ1人でこなしているのも知っているし、皇子王族への教育などそれの合間を縫っての強行軍だ。絶対的な能力を持っているからこそ日陰になり切っている。シェイドを引き抜いたのは、自分の片腕になれると納得するだけのものがあったからだろう。それを上奏した時のセツナは、表面上はともかく珍しく弱気だったと聞いた。我侭だと思っていたのかもしれない。
ちなみに引き抜かれたシェイドに関して言えば、そこからは薔薇色の人生を歩んでいる。
シェイドは誰がどこからどう見ても、セツナに惚れていた。
そして今は、やはりどこから見ても恋人関係に収まっている。
その情人をここまでタコ殴りにし、意識さえ失わせたまま放り投げて執務室に戻るというのは、その関係性を多少は疑うが―――……?
「…1時間」
「ん?」
「普段はそのくらいで起きる、って、言ったよな」
「ああ、そうだ―――っがぁ!」
「普段って何だ普段って!」
「ずっけえ!!」
「ずりぃシェイド!おいベリル水持って来い水っ!」
「ちょっと何言い出すのよ。可哀相でしょこんな」
「可哀相な訳あるか!こいつ抜け駆けだ!」
「抜け……」
「俺ら何年セツナに相手してもらってねぇと思ってんだ。忙しいだろうなーって、王になっても我侭言わなかった俺の立場はどうなる」
「我侭っていうな」
「でもセツナ、二人とも怖いんでしょ?」
「「怖い」」
「だがそれとこれとは別だ。おいシェイドっ!」
「んもー!」
「ベリル水だ水!くっそ!甘やかされやがって」
「子供なんだからもぉーっ!」
猫科に言われるとは少し心外だったが、猫科のエドガーと一緒になって騒いでいるのだから仕方がない。
結局ベリルは水を持ちには行かなかったから、俺が桶に汲んできた。水をかけてもシェイドは暫く起き上がらなかったが、起きあがってからは俺とエドガーで散々追いかけ回した。ベリルはそれをただ傍観していて、時々眉をひそめながらも笑っているのが見えた。訳の判らないまま逃げまわっていたシェイドだったが、突然俺達の視界から消えた。次に現れたのは、銀毛九尾。
―――しまった。
思った時はもう遅い。天地は逆転して―――腹を力の限り捻られたんだろうが、それも早すぎて今ひとつわからなかったが―――口から血を吐いていた。転がることもままならずに倒れて見上げていた空を、シェイドも飛んでいた。…やっぱり血を吐いて。タイミングからして、やられたのはさっき視界から消えた時だろう。ひでえ、真っ先にかよ。
セツナ、と、ベリルが上げたのは非難の声だっただろう。
「外でやれ、と言いたいが元々外だからな」
顔を少し動かしたら、逆様の顔が覗いた。
「立場を弁えなさい」
情人もろとも叩きのめす。非情な言葉を吐くその目はとても冷たい。そしてやはり、ベリルになにやら言い残してすたすたと去って行ってしまった。
こういうところでえこひいきをしないというのは大したものだと思う。あらゆる私情を捨てて、均等な賞罰を下すあの姿は、だからこそ永遠に近いような時をひとところに留まることを許されるのだろう。瑣末なことでも平等に裁くことで、セツナへの信頼は絶対なものになる。
時間、空間、双方においてセツナは約束を違えない。
だから、下手をすれば生命の危機に陥るであろう戦闘訓練を享受されることを、情人故の特別視、と断じてしまうのは獣牙族だからだけではない。うきうきと背伸びをしたシェイド、それに分かったと応えたセツナ。事が稽古であっただけで、あのありていは普通のものではない。明かに匂いが違う。そしてセツナが決して違えることのない、時、の約束を、これは破ったことになるのだから。

セツナは恐怖そのものだ。同時に憧れでもある。戦闘形態になったセツナと、というのはまだ死にたくはないので勘弁だが、普通の手合わせくらいはして欲しい。皇子、今では王のエドガーと一緒に育ったという特殊な立場から、特別な計らいを受けていることは分かっている。
だがどれだけ頼もうが、セツナが俺達に拳を向けてくれることがない事もわかっている。
セツナは将軍ではない。ただの軍師でもない。獣牙を陰からまとめ、統率出来るだけの能力を持った特別な駒だ。だからその能力は占有を許されないし、セツナもそれをさせることはない。時と、空間だ。
俺達はもう一人前として扱われていて、教育係お目付け役が要るような歳ではない。
我侭が通る時期はもう過ぎてしまっている。逆に後続を指導すべき立場なのだから。
―――そう、シェイドもまた、すでに一人前なのだ。
シェイドの時、は、本来すでに流れている。
それなのに、普段は、という言葉さえ飛び出すことがどういうことか。

セツナが恐怖でも悪魔でもない名で、恐らく本名で、呼ばれている事があるということだ。
メタメタに殴られて転がっているシェイドの顔が、嬉しそうにしか見えないのが何よりもの証拠だろう。





***


―――ところで。

表があれば、裏もある。裏書庫に入れるのは王族とセツナだけだが、シェイドもそこの本を読んでいるらしい。鍵はたったひとつしかないと聞く。それを管理しているのは言うまでもないが、セツナだ。
どうやら俺も特例の内に入っているのだとエドガーから聞いたが、それは実にありがたくない好意だと思う。
勿論エドガーは、裏書庫に入る気などないようだ。






セツナ大好きです。

第3段ウエハース処分中に真っ先に目が行ったのは、
実はコランダムです。
『覇王丸みたいね』とかゆってました。
神羅、格ゲーにならなって欲しい(またですか)。
試合開始ボイスが、『ゲームの始まりなんたらかんたら』。
勝利ボイスは『チェックメイト』(タイムレンジャー風)。