| 2.1 教育大学の学校の庭
カールスルーエ教育大学の学校の庭が作られたのは1985年。現在は生物学部のレナート教授が責任者となり、教員2人と実習に加わる2クラス約40人の学生が管理運営を行っている。面積は1600平方メートルで、大きく“畑の区画・ビオトープの区画・体験の区画”の3つに分かれる。
ここは教育大学の学校の庭なので、普通の小中高校の学校の庭とは内容と目的が違っている。まず、規模が大きく、設備が整い、管理状態が良好で、植物相が多様である。そして、ここで実習を受けた学生達は将来小中学校の先生となるので、庭の主な役割は『学生の教育』だ。
特に興味深いのは、ここが学生と子供たちのコミュニケーション空間になっていること。次の章で触れる庭の公開日などで、学生が子供たちと一緒に活動する機会も設けられている。学生はそうした経験から学校の庭を使った教育方法について実地に学べる。『子供たちが学校の庭の中で何に興味を持つのか?』そして『環境授業に対する子供たちの反応』も実際に観察できるわけだ。 また、この庭はは市民にも開放され、平日9時から夕方6時まで中を散策することもできる。街には花と芝生のきれいな公園がたくさんあるが、小魚が住む池・昆虫のための花の草原などビオトープを含んだ公園となると少数だ。市民が多様な自然を学べる公園としても重要である。
2.2 庭の開放日 2年E組がジャガイモを収穫する前週の金曜は、ちょうど教育大学の庭の特別な開放日。学生がグループ毎にプロジェクトを担当し、教員と共に一般市民向けに学校の庭の活動を紹介してくれた。訪れたのは一般市民の他、学校の庭に興味を持つ教員、中学・高校の生徒、子供連れの家族など500人ほど。 2年E組もいつもの時間に学校の庭に到着。今日は、特別楽しい催し物が一杯だ。
学校の庭を使った小学校低学年の環境教育は遊びが基本だが、どのように授業を組み立てていくかは先生のシェーファーさんも試行錯誤の連続だそうだ。その日になってみなければ天気はわからないし、一学期を通した完全なカリキュラムをあらかじめ立てることもできない。庭の開放日の催し物は、大学の教職員と学生達が準備をしたものだが、学校の庭でどんな授業をできるかヒントがたくさん含まれている。
2.3 庭の管理 春に日本から視察に来た方を連れてこの庭を訪問し、レナート教授から説明を受けたことがある。外国からの見学者も多く、日本人グループは今年計3組が訪れるそうだ。「国内より、外国からの見学者のほうが多いんだ。」と教授。なるほどそういうものかもしれない。教授によれば、学校の庭を使った教育は旧東ドイツの方が盛んなのだそうだ。ドイツ統一前、旧東ドイツの小中学校には学校の庭の設置と授業が義務付けられていた。ドイツ統合によって教育を含めた東ドイツのシステムはすべてが否定的に考えられがちだが、こと学校の庭に関しては統合ドイツもそのシステムを見習うべき点がたくさんあるようだ。 現在、バーデン・ヴュルテンブルグ州では、小学校2年から5年生のカリキュラムに学校の庭の授業を取り入れることが奨励されている。ただし、学校の庭の設置は義務ではないし、学校によっては敷地内にそのスペースが無かったりする。もっとたくさんの学校に設置されてもいいと思うのだが、誰が中心となり管理運営していくかがかならず問題となるようで、なかなかすべての学校が設置するまでには至っていない。 「問題は予算? それとも学校のスペースですか?」と教授に聞いたところ「いいえ。一番大切なポイントは学校の庭を作るときの、子供達、教職員、父母のやる気と努力。それから、学校の用務員さんの協力がとても大事。休みの期間など、用務員の協力が無ければ植物は枯れてしまうから。」 カールスルーエ市では2年前に学校の庭のコンテストを行い、その冊子も作っている。その冊子を頼りに学校を訪問すると、すでに荒れている庭もある。積極的な先生が転勤してしまうと庭の維持に問題が出るところも多い。 |